【その3】これ本当?『国内MBA半分は定員割れの「限界スクール」。 法科大学院に続き淘汰の波』の続きです。
さて、定員割れのビジネススクールと定員が充足しているビジネススクールの差は、いったいなんなのでしょうか?
今回は定量的なアプローチをしてみます。前回に続き日経キャリアマガジン「社会人の大学院ランキング2016」に加え、総務省の国勢調査、たぬたぬさんの数字を作ってみたを出典としております。
データ分析
早速分析結果を示します。なお、入手できる全ての項目で比較したわけではありません(入力の手間が・・・)。
前回の記事で示した77校について、定員割れのビジネススクール(定員充足率1.0未満)計37専攻と定員が充足しているビジネススクール(定員充足率1.0以上)計40専攻の2群に分け、各群内の項目毎に平均値をとりました。
各項目の説明
- 設置区分は、国公立ならば1、私立ならば2としました。
- 学部偏差値は、たぬたぬさんの数字を作ってみたからもってきています。元ネタは駿台の偏差値とのことです。MBAは文系平均、MOTは理系平均を持ってきています。なお、国公立と私立をいっしょくたにしております。学部がない大学院は欠損値としています。
- 経営学科研費平均件数(件/年)は、たぬたぬさんの数字を作ってみたの科研費獲得量からみる各研究分野の主要大学 (3)分野・分科別集計 ②社会科学 e.経営学 からもってきました。元ネタは国立情報学研究所の科研費データベースとのことです。
- 札幌など各大都市圏の項目は、その専攻が所在するならば1、そうでないならば0としています。複数の大都市圏に設置している専攻は、各地の定員が公開されていないものについては、1をその大都市圏の人口で案分しました。グロービス、山口、名古屋商科が該当します。大都市圏をまたいで設置されている専攻は、通学する頻度が高いほうの大都市圏を1としました。たとえば北陸先端は本部は石川県ですが、学生は品川に通うので関東大都市圏としています。大都市圏の定義は国勢調査に従いました。
- 原則としてデータは日経キャリアマガジン「社会人の大学院ランキング2016」からもってきています。
評価方法
定員充足率1.0未満と定員充足率1.0以上の2群について、群間で各項目の平均の差についてウェルチのt検定をしました。
評価結果
5%有意水準で、「設置区分」「経営学科研費平均件数(件/年)」「広島大都市圏」で2群間の平均に差がないとは言えない、という結果が出ました。定員充足率1.0以上の専攻は、国公立で、経営学科研費獲得が活発で、広島にあること(笑)であれば確からしいという説明になりそうです。
まあ広島には山口大のMOTしかないので除くとして、充足しているビジネススクールが、国公立で、経営学科研費獲得が活発、というのはなんともつまらない結果となりました。「働きながら学ぶ人の割合」と、「外国人学生割合」は見るからに2群に差はないですし、大都市圏毎のビジネススクール供給度合を表す「MBA/MOT大都市圏供給度」も有意な差はありませんでした。ただ「中京」は10%有意水準であれば有意になりますので、補足として「中京大都市圏」もいちおう平均の差の説明になるかもしれません。
なお、経営学科研費獲得数は、経営学科研費獲得額のほうが適切かもしれませんが、集計に手間がかかるため不採択としました。また、これらの値は所属している教員の数が影響するはずですので、本当は経営学科研費獲得率で用いるべきだと思いますが、分母となる各校の経営学教員数のデータがないため、結局獲得数をつかっています。
ここでの結論
定員割れのビジネススクールと定員が充足しているビジネススクールの差は、設置区分、経営学科研費獲得件数、学部の偏差値、中京大都市圏で説明できるかもしれません。つまり、定員が充足しているビジネススクールを選ぶには、国公立で、経営学科研費獲得が活発で、中京大都市圏にないことが条件になりうるしておきましょう。ただこの分析は、評価項目数が少なく、また全てのビジネススクールを網羅していない(例えば埼玉大)ので、あくまで所与のデータ内での分析結果であることをご留意ください。
この結論はとてもつまらないので、別のアプローチで分析してみます(笑)。