名目賃金上昇率を考慮する
単年の平均年収のデータだけで年収増分を評価すると、賃金上昇率が考慮されません。極端な例ですが、1965年の日本の平均年収は44.8万円であるのに対し、2017年には約10倍の400万円代になっています。昨今は低成長時代なので年収もほとんど増えていないのでは?と考えてしまいがちですが、感覚だけで判断するのはよくありません。ちゃんとデータで評価してみましょう。
ということで、4年前のデータとして2013年のdoda平均年収データを採用しましょう・・・・と思ったら、dodaのサイトにこんな注意書きが。
※今回の「平均年収ランキング2017」から、データの集計方法や職種・業種の定義を変更しています。そのため2016年以前のランキングとの比較は行っていません。
あれま。それは困りました。比較に使ってはいけなそうですね。
賃金構造基本統計調査データを用いる
では他の統計データを使いましょう。伝家の宝刀、賃金構造基本統計調査データならば、同じ集計方法の2013年と2017年のデータがあります。
両年とも大卒データを使用します。グロービスは在学生の最終学歴を公表していませんが、大学院であること、文科省によると専門職大学院の学生の86%が学部卒であることから、大卒データを用いるのが妥当でしょう。
年齢 | 2013年 平均年収 |
2017年 平均年収 |
対5年前比 |
22 | 246.6 | 260.1 | |
23 | 276.0 | 297.1 | |
24 | 319.9 | 340.3 | |
25 | 346.7 | 366.1 | |
26 | 372.0 | 387.3 | |
27 | 389.4 | 406.9 | |
28 | 396.5 | 421.9 | |
29 | 411.1 | 436.8 | |
30 | 421.8 | 457.7 | |
31 | 436.8 | 470.6 | |
32 | 453.6 | 491.6 | |
33 | 476.1 | 504.7 | |
34 | 497.6 | 523.0 | |
35 | 516.6 | 542.1 | |
36 | 530.3 | 552.9 | |
37 | 533.9 | 572.7 | |
38 | 588.7 | 592.9 | |
39 | 591.6 | 601.8 | 116.5% |
40 | 603.9 | 630.5 | |
41 | 635.4 | 651.7 | |
42 | 657.4 | 656.3 | |
43 | 716.9 | 688.1 | |
44 | 716.2 | 731.5 | 121.1% |
45 | 762.7 | 746.0 | |
46 | 778.4 | 771.6 | |
47 | 774.7 | 795.5 | |
48 | 809.6 | 849.6 | |
49 | 812.6 | 836.4 | |
50 | 847.0 | 866.2 | |
51 | 853.8 | 921.6 | |
52 | 843.7 | 880.1 | |
53 | 824.5 | 885.3 | |
54 | 865.9 | 910.0 | |
55 | 788.2 | 896.7 | |
56 | 765.5 | 885.6 | |
57 | 800.3 | 889.0 | |
58 | 850.9 | 877.0 | |
59 | 795.0 | 811.2 |
2013年の35歳は平均年収516.6万円、2017年の39歳は平均年収601.8万円です。これは16.5%の増加にあたります。同様に2013年40歳603.9万円→2017年44歳731.5万円で、21.1%の増加となります。
この上昇率を標準の値と仮定して、グロービスレポートにあるグロービス卒業生の上昇率と比較してみましょう。
標準の年収上昇率① | グロービス卒業生の年収上昇率② | 比(②÷①) | |
35→39歳 | 16.5% | 35.0% | 212% |
40→44歳 | 21.1% | 27.4% | 130% |
標準と比べてグロービス卒業生は35歳→39歳で2.1倍、40→44歳で1.3倍年収が上昇していることになります。こちらもグロービスレポートにある「約5倍の上昇率」にはいかないものの、約2倍近いの上昇率であるとはいえることがわかります。
比較するデータによって上昇率には見解の相違がありますが、「大きな上昇率を示す」という主張は妥当性ありといえるのではないでしょうか。
まとめ
標準と比べ4年間で1.3倍から2倍の年収増は、堂々たるものだと思います。前回のdoda補正年収との比較も併せて考えると、グロービス卒業生は大きな収入増を経ているといえると思います。
本稿の限界と今後の課題
グロービス、doda、賃金構造基本統計調査のいずれも、それぞれの個別データにアクセスできない上、公開されているプロフィールの種類が異なるため、条件を近づけるための補正には限界があります。そういった事情からグロービスレポートも、「仮に」doda調査と比較した場合という前提条件を付けているのだと思います。例えば、年齢、性別、学歴、業種、職種、地域で補正できれば、もう少し突っ込んだ比較ができるのではと思います。
私は、MBAをとる意義は年収アップだけではないと思っています。むしろ年収アップは副次的なものである、と考える人もいるかもしれません。今後はグロービスのレポートも含め、年収アップ以外の直接的・間接的なMBA取得の効果も検証してゆきたいと思います。
<2018/10/22追記>
引用元のつづりが誤っておりました。関係者の方々には大変失礼いたしました。本文中の表記を訂正するとともに、ここにお詫び申し上げます。
(誤)duda
(正)doda
なお、パーソルキャリア株式会社は転職サービスのブランドである「DODA」を2018年10月16日に「doda」にリブランディングしましたので、本稿では後者に合わせて表記しております。