グロービス経営大学院卒業生アンケート2018考察4

(その3の続き)

名目賃金上昇率を考慮する

単年の平均年収のデータだけで年収増分を評価すると、賃金上昇率が考慮されません。極端な例ですが、1965年の日本の平均年収は44.8万円であるのに対し、2017年には約10倍の400万円代になっています。昨今は低成長時代なので年収もほとんど増えていないのでは?と考えてしまいがちですが、感覚だけで判断するのはよくありません。ちゃんとデータで評価してみましょう。

ということで、4年前のデータとして2013年のdoda平均年収データを採用しましょう・・・・と思ったら、dodaのサイトにこんな注意書きが。

※今回の「平均年収ランキング2017」から、データの集計方法や職種・業種の定義を変更しています。そのため2016年以前のランキングとの比較は行っていません。

あれま。それは困りました。比較に使ってはいけなそうですね。

賃金構造基本統計調査データを用いる

では他の統計データを使いましょう。伝家の宝刀、賃金構造基本統計調査データならば、同じ集計方法の2013年と2017年のデータがあります。

両年とも大卒データを使用します。グロービスは在学生の最終学歴を公表していませんが、大学院であること、文科省によると専門職大学院の学生の86%が学部卒であることから、大卒データを用いるのが妥当でしょう。

年齢 2013年
平均年収
2017年
平均年収
対5年前比
22 246.6 260.1
23 276.0 297.1
24 319.9 340.3
25 346.7 366.1
26 372.0 387.3
27 389.4 406.9
28 396.5 421.9
29 411.1 436.8
30 421.8 457.7
31 436.8 470.6
32 453.6 491.6
33 476.1 504.7
34 497.6 523.0
35 516.6 542.1
36 530.3 552.9
37 533.9 572.7
38 588.7 592.9
39 591.6 601.8 116.5%
40 603.9 630.5
41 635.4 651.7
42 657.4 656.3
43 716.9 688.1
44 716.2 731.5 121.1%
45 762.7 746.0
46 778.4 771.6
47 774.7 795.5
48 809.6 849.6
49 812.6 836.4
50 847.0 866.2
51 853.8 921.6
52 843.7 880.1
53 824.5 885.3
54 865.9 910.0
55 788.2 896.7
56 765.5 885.6
57 800.3 889.0
58 850.9 877.0
59 795.0 811.2

2013年の35歳は平均年収516.6万円、2017年の39歳は平均年収601.8万円です。これは16.5%の増加にあたります。同様に2013年40歳603.9万円→2017年44歳731.5万円で、21.1%の増加となります。

この上昇率を標準の値と仮定して、グロービスレポートにあるグロービス卒業生の上昇率と比較してみましょう。

標準の年収上昇率① グロービス卒業生の年収上昇率② 比(②÷①)
35→39歳 16.5% 35.0% 212%
40→44歳 21.1% 27.4% 130%

標準と比べてグロービス卒業生は35歳→39歳で2.1倍、40→44歳で1.3倍年収が上昇していることになります。こちらもグロービスレポートにある「約5倍の上昇率」にはいかないものの、約2倍近いの上昇率であるとはいえることがわかります。

比較するデータによって上昇率には見解の相違がありますが、「大きな上昇率を示す」という主張は妥当性ありといえるのではないでしょうか。

まとめ

標準と比べ4年間で1.3倍から2倍の年収増は、堂々たるものだと思います。前回のdoda補正年収との比較も併せて考えると、グロービス卒業生は大きな収入増を経ているといえると思います。

本稿の限界と今後の課題

グロービス、doda、賃金構造基本統計調査のいずれも、それぞれの個別データにアクセスできない上、公開されているプロフィールの種類が異なるため、条件を近づけるための補正には限界があります。そういった事情からグロービスレポートも、「仮に」doda調査と比較した場合という前提条件を付けているのだと思います。例えば、年齢、性別、学歴、業種、職種、地域で補正できれば、もう少し突っ込んだ比較ができるのではと思います。

私は、MBAをとる意義は年収アップだけではないと思っています。むしろ年収アップは副次的なものである、と考える人もいるかもしれません。今後はグロービスのレポートも含め、年収アップ以外の直接的・間接的なMBA取得の効果も検証してゆきたいと思います。

<2018/10/22追記>
引用元のつづりが誤っておりました。関係者の方々には大変失礼いたしました。本文中の表記を訂正するとともに、ここにお詫び申し上げます。
(誤)duda
(正)doda
なお、パーソルキャリア株式会社は転職サービスのブランドである「DODA」を2018年10月16日に「doda」にリブランディングしましたので、本稿では後者に合わせて表記しております。