これまでの記事の通り、日本では多くのビジネススクールが定員割れを起こしています。既に募集停止したビジネススクール、募集停止を表明したビジネススクールも見受けられます。そんな中、グロービス経営大学院は毎年定員を超える応募があり、それに応えるために毎年定員を増やしているという破竹の勢いの様相を呈しております。
グロービス躍進の秘訣に、積極的な広報・マーケテイング活動があげられます。例えば学校説明会。普通は年に1~2回、多くて4回ですが、グロービスは2016年9月の一ヶ月だけでも8回(!)開催しています。
正直このブログの各校紹介で最も人気のある記事が「国内MBA比較(グロービス経営大学院大学編)」になるとは思ってませんでした。そのぐらい注目されています。私はグロービスに入学したことはありませんので、外部からの視点でしかわかりませんが、皆様のご期待に応えるべく、グロービスについて特集してみたいと思います。
第3回卒業生キャリアアンケートより年収変化について
グロービスは卒業生に定期的にアンケートをとり、キャリアについて追跡調査を行っています。今回は第3回卒業生キャリアアンケートの内容を確認したいと思います。
まず「卒業後のキャリアの変化は?」という質問に対して、92.3%が「処遇・キャリア面でポジティブな変化あり」と回答しているとのことです。
(グロービス第3回卒業生キャリアアンケートより抜粋)
そしてその内訳で最も多かったのが「年収が増加した」で64.4%を占めています。
(グロービス第3回卒業生キャリアアンケートより抜粋)
どのくらい年収が変化したかというと、入学時と比較して平均で137.9%とのことです。
(グロービス第3回卒業生キャリアアンケートより抜粋)
さてここでのポイントは、グロービスを卒業したから、年収が137.9%伸びたのでしょうか?という点です。
まずこのアンケートの統計量を推測してみます。アンケートはグロービスを信頼してランダム抽出と仮定します。
在学、修了者数等 – グロービス経営大学院によると各年度毎の卒業生数は以下の通りです。
卒業年度 | 卒業者数 |
2007 | 13 |
2008 | 52 |
2009 | 108 |
2010 | 121 |
2011 | 221 |
2012 | 310 |
2013 | 371 |
2014 | 442 |
卒業年度の加重平均は2012.119です。修業期間は2年なのでマイナス2して、アンケート対象者の平均入学年度は2010年とします。
次に入学者平均年齢です。学生プロファイルによると、在学者平均年齢は36.6歳のようです。これを入学者平均年齢として採用します。
以上より、このアンケートは2010年に36.6歳だったグロービス入学生は、卒業後の2016年に42.6歳になったときに、年収が137.9%になった(いずれも平均値)、と読み変えられます。
賃金構造基本統計調査との比較
さて、ここで厚生労働省の賃金構造基本統計調査を確認します。
平成22年(2010年)の調査によると、大卒37歳男の平均年収は5,825,400円(企業規模計10人以上)とあります。一方平成27年(2015年)の調査によると、大卒42歳男の平均年収は7,861,300円(企業規模計10人以上)とあります。(平成28年の統計はまだ公表されていないので、平成27年統計で代用します)
これより、2010年に37歳だった労働者(大卒男)は、2016年に42歳になったときに、年収が134.9%になった(いずれも平均値)、ということになります。
標本数はグロービスの調査が809、厚労省の調査が万単位なので、互いの調査への影響は極めて小さいと考えられます。
考察
この以上2つの調査の年収変化率を比較すると、グロービスを卒業すると、グロービスを卒業しないより6年間で平均3%ほど年収が高くなる、と読み取れます。つまり、グロービス卒業は、年収上昇の重要な要因でないということです。
2つの調査の値が近いことから、グロービスの調査は精度が高いと言えるでしょう。グロービスが統計データを誤魔化している可能性は、非常に低いと思います。
既存の大学MBAと異なる点の一つですね。
———
よろしければグロービス経営大学院特集2、国内MBA比較(グロービス経営大学院大学編)も併せてご覧いただければ幸いです。また、本ブログではグロービスだけでなく、国内のビジネススクールの比較など、国内MBAに関する様々な記事を掲載しております。ぜひトップページからご覧頂ければと思います。