名古屋の他、東京や大阪にもサテライトキャンパスがある国際認証(AACSB、AMBA)を得た国内全日制or週末制MBAである名古屋商科大学マネジメント研究科を取り上げます。
開講科目状況
科目グループ | 名古屋商科 |
戦略 | ○ |
マーケティング | ○ |
会計 | ○ |
組織 | ○ |
財務 | ○ |
人材人事 | |
金融 | |
国際経営 | |
オペレーションズマネジメント | |
企業倫理・哲学 | |
証券 | |
経済学 | ○ |
アントルプレナー | ○ |
ビジネスエコノミクス | ○ |
技術経営 | |
統計 | |
ベンチャー | |
経営科学 | |
ブランド | |
ロジスティクス | |
イノベーション | ○ |
法務 | |
英語 | |
知的財産 | |
情報システム | |
ロジカルシンキング&ライティング | |
ネゴシエーション | ○ |
経営史 | |
税務 | |
意思決定 | |
プロジェクトマネジメント | |
CRM | |
サービス・マネジメント | ○ |
出典:MBA 名古屋開講例
他にはMBAエッセンシャルズ、ビジネスモデルデザイン、内部統制システムとリスクマネジメント、ビジネス・エスノグラフィー、 説得させるプレゼンなどの特徴的な科目があります。
AACSBの認証評価基準最新版(2016年更新版)では、ビジネススクールにおける戦略とイノベーション、学生と教職員と専門スタッフ、学びと教授、理論と実践に区分される15の基準を満たすことを要求しています(出典:Eligibility Procedures and Accreditation Standards for Business Accreditation)。
国際認証がわかりづらい方は、ISOをイメージすればよいと思います。例えば日本において上場企業の79.3%、非上場企業の53.3%が取得(平成23年度 環境省アンケート結果より)したISO 14001シリーズ。これは、環境に関するPDCAを回しましょうとか、トップダウン型の管理をしましょうといった環境マネジメントシステムを要求しているものです。湿式シュレッダーを使ってリサイクル率を上げましょうとか、昼休みは電気を消しましょうといった個別の施策ではなく、あくまでマネジメントシステムに対しての要求が書かれています。AACSBも同様に、例えば×××という科目を置くべきだ、など個別の施策については要求していません。ですので、上記の科目群も名古屋商科大なりにAACSBの基準をクリアするためにはどんな科目が必要かを検討した結果の配置と考えられるでしょう。
専任教員一人当たりの学生数
専任教員は27人、学生定員は2学年で270人なので、専任教員一人当たりの学生数は10.0人です。
初年度納入金
1,635,000円
倍率
2009年度 志願者数194人、合格者数152人、倍率1.28倍
まとめ
夜間制はなく、全日制、もしくは週末みっちりという時間割となっています。
なぜ日本では国際認証のMBAプログラムが少ないのでしょう。
ここから私見です。
MBAプログラムと同等に、日本が世界に比べ取得数が少ない国際認証が過去にありました。それは日本のお家芸である品質に関する国際認証ISO 9001シリーズです。1970年代、日本はTQMによる品質管理で世界トップを走っていたため、国際的な基準など全く興味がありませんでしたでした。他の国々は、日本を独走を阻止すべく検討を始めます。その中で、品質そのものではなく、枠組みを変えれば日本の独走を防げるのではないか、と考えた国々が現れました。トップである日本に追従するわけではなく、品質にまつわるゲームのルールを変えようとしたのです。そして1987年、それらの国々によって「品質管理および品質保証に関する一連の国際規格」がISO
9001として制定されました。これにより、どこの国と取引するにもISOへの準拠が求められるようになりました(特に欧州)。慌てて日本企業はISO 9001の認証を取得しようと追従します。職場の5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)、3現主義(現場・現物・現実)といった日本の標準をISOに適合させるために一生懸命がんばりました。しかし、既にゲームのルールが変わった後。これが致命傷になったのかは定かではありませんが、新興国の台頭も相まって日本は徐々に世界での競争力を失っていくのでした(参考:
Risk-based Thinking)。
国際認証のMBAプログラムについても、同じことが 言えるのではないでしょうか。コロンビア、コーネル、イェール、ハーバード等が1916年にAACSBを設立した時点で、もうゲームのルールは決まっていたのです。そのゲームに労力を割いて敢えて乗るメリットは?と考えると、日本の大部分のビジネススクールは乗らないほうを選択したのでしょう。
ゲームのルールを変えようとしたスクールもあります。海外のIACBE、ACBSP、EFMDなど認証機関が乱立している理由がそれだと思います。また、日本でもゲームに乗るビジネススクールも現れてきており、最近では早稲田や一橋、立命館アジア太平洋大がAACSBを取得しようする動きがあります(参考:朝日新聞「大学院のMBA教育拡充へ 一橋大・早大、世界水準狙う」)。さて、日本のビジネススクールは、今後どうするのでしょうか?
ところで、ISOの認証は返上する企業が増えています。初期コストや運用コストがバカにならないし、動かしてみたら実効性がないとわかってきたからです。ゲームに踊らされた結果が、そんな状況です。
もし1990年前後、ISO 9001に合わせるという余計な努力をせずに自前の品質管理を貫いていたら、日本はどうなっていたのでしょうね・・・。