「卒業生の声」計量テキスト分析 筑波GSSM編

「卒業生の声」計量テキスト分析 筑波GSSM編です。ツールはこれまでの卒業生の声シリーズと同様にKH Coderを利用しました。
ところでこのシリーズのタイトル、大学院だから「卒業生」ではなく「修了生」なのでは? と、突っ込みを入れたくなると思いますが、そのあたりの言葉の定義にはあまりこだわりっていません。というか、最初に調べたグロービスのインタビュー記事のタイトルを引用して以来、そのまま「卒業生」を使用しているだけです(笑)。まあ、新聞などでも「16年春の修士課程卒業者の就職率は・・・」というような表記も平気で使われていますし、いいんじゃないでしょうか。

話は戻して、今回の分析データソースは筑波大大学院ビジネス科学ホームページの「学生インタビュー」に掲載されていた15人分のインタビュー記事から、肩書や経歴を削除したテキストデータです。総抽出語数は23,632、異なり語数は2,441でした。

共起ネットワークによる分析

下図が生成された共起ネットワークになります。

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■パラメータ
カラー:中心媒介性、最小出現数:13、 最小文章数:1、 描画数:96、 強い共起関係ほど太い線で描画、 出現数の多い語ほど大きい円で描画、 最小スパニングツリーを強調表示、ラベルが重ならないように位置を調整

例によって以前に掲載した他校との比較について、自校の名称の周りを中心に見てみましょう。

4a p4 共起ネットワークグロービス1
筑波GSSM
早稲田
グロービス

筑波GSSMの場合、とにかく「研究」がドでかいです。そして「修士」「論文」「先生」「専門」「指導」「テーマ」というワードが見えます。これはわかりやすいですね。筑波GSSMは学習よりも、研究するところである、ということでしょう。早稲田やグロービスにある「得る」「考える」というワードはありません。「学ぶ」というキーワードも、ここにはありません。

次に右側を見てみましょう。
4c
ここに「学ぶ」が出てきています。つながっているのは「経営」「知識」ですね。一方、左下の「分野」が中心性をもっています。インタビューを読むと、「私は・・・という分野を研究しました」というような記述が見られます。学生がそれぞれ研究テーマをもっているのでしょう。変わって右側の「経験」は、社会人経験とか、経験の積み重ねが重要であるとか、そういった文脈で出ています。学部卒業したての若い人からはなかなか出てこない言葉です。学部卒業したてでこの院に入る人はあまりいないのではないでしょうか。

次に右下を見てみます。
4b
ゼミに参加したりして同級生に刺激を受けることが多かった、ということでしょうか。このあたりは多様性の高い社会人大学院ならではですよね。

ところで、早稲田WBSで出てきた形容詞「高い」は、筑波GSSMではみあたりません。こうして改めて2校を比較して考えると、「高い」が最頻値である早稲田WBSの卒業生は自校に愛着があり、彼らの思うWBSの様々な「高度さ」を表出したかったのかもしれません。組織アイデンティフィケーションが高いということでしょうね。
ちなみに筑波GSSM、グロービス、早稲田各3校の形容詞頻出上位10語は以下の通りです。
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グロービスと早稲田は傾向が似ていますが、クロービスで特徴的なのが緑色にした「正しい」。これは正しい答えはないとか、正しい答えを求めてしまうとか、そういう文脈で用いられています。ケースメソッド中心で、正解は教えないという授業スタイルを意味しているのでしょう。筑波GSSMがグロービス・早稲田と比較して特徴的なのは、黄色にした「難しい」「面白い」です。「難しい」は、ビジネスでの難しさ、研究や学業の難しさという文脈で出てきます。「面白い」も同じように、ビジネスでの面白さ、研究や学業の面白さという文脈で出てきます。筑波GSSMは学生が研究テーマを持ち込んで研究するというコンセプトなので、能動的に自身のテーマを決めているため問題意識が明確でモチベーションが高いのでしょうね。

次に左側にいきます。
4d
「実務」や「業務」を通じて発生した「課題」を「解決」したいということでしょう。インタビューでもほとんど同じ文脈でこれらのワードが用いられています。

まとめ

もはや出オチといえるぐらいわかりやすいです。筑波GSSMは研究をするところです。学生各人が、実務経験に端を発した問題意識即した研究テーマをもっており、それを解決しようと筑波GSMMの門をたたいています。グロービスがビジネスに正しい答えはないので考え抜け、というスタイルなのに対し、筑波GSSMは正しい答えを追い求めなさい、ただし正しい答えはまだ誰も知らないから研究すべし、というスタイルです。研究には教員の手厚い指導を受けられるようです。学生は、研究を通した課題解決に対して、難しいが面白いと感じているようです。

さて、ここまででグロービス、早稲田、筑波GSSMと見てきました。なぜこの3校を選んだかというと、インタビューの量が豊富だったからです。インタビューの量が多くないと分析もしにくいですので、今後もインタビューの多い学校を重点的に選んでいきたいと思います。